ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長
日本から経済成長が失われた時代に、炭鉱の町のさびれた商店街から飛び出し世界的なアパレル企業へと駆け上がったユニクロ。無名の紳士服店はどうやってグローバル企業への階段を上ってきたのか。その裏にあった知られざるストーリーを5回連載でひもといた「ユニクロ秘録」をまとめてお届けします。
(編集委員 杉本貴司)

①ユニクロ「戦う相手が変わった」柳井氏見果てぬ30年構想

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「最後の改革」と語る「情報製造小売業」への進化。アジアの工場に服の生産を委託する製造小売り(SPA)と呼ぶ国際分業体制にデータの力を融合させる改革は、出足からトラブル続きとなりました。柳井氏が頼ったのは意外な人物でした。柳井氏を突き動かすユニクロ改革への執念。その裏には30年越しの見果てぬ構想がありました。

1984年に開業した「ユニクロ」の1号店(広島市)
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②ユニクロ柳井氏が孫正義氏からロボVBを「強奪」したワケ

産業ロボットのスタートアップ、Mujin最高経営責任者(CEO)の滝野一征氏が突然置かれたのは、日本の起業家にとって「究極の選択」と呼べる状況でした。滝野氏の前に現れたのは柳井正氏と孫正義氏。2人の巨頭の間に挟まれた若き起業家の決断とは。なぜ柳井氏は滝野氏に手を差し伸べたのか。その背景には柳井氏が資金繰りで苦労した若き日の経験がありました。

滝野一征氏は孫氏と柳井氏を前に「どちらを取るのか」と言われているのに等しい選択を迫られた
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③45歳ユニクロ新社長、閉店の夜に誓った難路の米国再建

2023年9月、ファーストリテイリング傘下「ユニクロ」の社長に就任した塚越大介氏は、45歳の若さながら柳井氏の後継者の最有力候補として一躍注目を集めました。塚越氏が担ったのは、長年の経営課題だった米国事業の黒字化。新型コロナウイルスの脅威にさらされる崖っぷちの状況で、塚越氏はある場所に足を運び、再起を誓いました。

塚越氏は米国事業を黒字化した(米ニューヨークのソーホー店)
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④ユニクロ柳井氏「まんじゅう屋の教え」 ロッテ社長の原点

ロッテホールディングス社長の玉塚元一氏はかつて、39歳で柳井氏から社長のバトンを渡されました。ちょうど「フリースブーム」が去ったあとの苦難の時期。2人の間には相克もありましたが、玉塚氏はいまでも柳井氏を「商売の師」と仰ぎます。「プロ経営者」と呼ばれる玉塚氏の原点が、柳井氏との出会いでした。

39歳の玉塚元一氏(左)との社長交代を発表するファーストリテイリングの柳井正氏(2002年5月)
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⑤ユニクロ柳井氏の暗黒時代 「寝太郎」を覚醒させた言葉

早稲田大学に通っていた当時、柳井氏はマージャン以外は寝てばかり。付いたあだ名が「寝太郎」。就職もせずに父のコネでジャスコ(現イオン)で働くもたったの9カ月で辞めてしまい、友人宅に居候してしまいました。絵に描いたような「放蕩(ほうとう)息子」だった20代の柳井氏を覚醒させた出来事がありました。そこから始まった成功への「解」を探し求める暗黒時代を、当時無名の柳井氏はどう生き抜いたのか。

かつて小郡商事があった銀天街(左)には現在、シャッターの下りた店が並ぶ(右、2021年12月撮影)
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連載「ユニクロ秘録」は日経BPより刊行した「ユニクロ」をベースに一部加筆の上、再構成しました。
  • 著者 : 杉本 貴司
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 2,090円(税込み)
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